最愛の人

昨日
22:22　僕は先輩とともにJUSCOで買い物をしていた．
ふいに携帯がなった．

差出人：「元彼女H」
件名：「元気ですか？」

僕はそこから先輩とは何を話したかは一つも覚えていません．
研究室に帰ってきて後輩たちと何話したかも一切覚えておりません．
全てが上の空だった．

元彼女と連絡を最後にとってから3ヶ月以上たっていた．
内容は
「荷物送るって言ってて送るの遅くなってごめん．
　来週中には送るね．」
という内容のメールだった．

なんで今ごろ出すの？
出さないで欲しかった．

僕のほうから「鍵を返してくれ」っていうメールを出したかった．
自分の出したいタイミングで．
まだ早いよ．

まだいらなかったよ．

僕の心は一気に彼女一色に染まった．
そして聞かずにはいられなかった．

「荷物なんていつでもよかったのに．
　そちらこそ元気にしてる？
　彼氏とうまくいってますか？」

怖かった．
結果が分かっているのにこの内容のメールを出すのが怖かった．
でもほんとに聞かずにはいられなかった．

「元気だよ．
　彼氏ともうまくいってるし．
　としは彼女できた？」

ほらね．
わかってたことじゃん．
なんで聞いたの？
ほんとばかだね．

「よかったね．
　幸せだね．」

もう気のきいた返事を返すことなどできるはずもなかった．
ただショックでショックで．
わかってたことだけどやっぱりショックだよ．

「としも幸せになってね．」

そう返ってきた．

そんな言葉もうかけないでよ．

でも僕は彼女との関係が途切れるのが怖かった．
せめてつながっていたかった．
だからメールを返した．

「もし何か自分でも役に立てることがあったら遠慮なく言ってね．」

「としもなにかあったら言ってね．
　ずっと気になってたんやけど大学のほうは
　うまくいってるの？」

9月は正直うまくいってなかった．
何回も進学することを止めようと思った．

でも僕が止めようと思いはするが実際には止めれなかった．

別に就職に変えても良かった．

でもある言葉が支えてくれていたから．

僕が最後別れ際に，彼女に進学止めたいといったとき
彼女が僕に言った言葉．
「あんたは人に迷惑かける人じゃないでしょ．
　今あんたが研究室止めたらどうなるん？
　一番どうなるかわかってるのはあなたでしょ？
　がんばんなよ．」
その言葉があったから僕は耐えて来れた．
彼女としてではなくなったけど，
僕のことを一番近くで見ていてくれた人からもらった言葉．

僕は人に迷惑をかけるような男ではない．
彼女のこの言葉だけは裏切ることなどできなかった.
思い出しては涙がこぼれたけど・・・．

僕はその言葉のおかげでがんばって来れたことを
どうしても伝えたかった．
ありがとうと言いたかった．

だからそのことを送った．

また，それとは別に，
「何かあったら言ってね．」
に対して，最後の願いだけはかなえてね．
と僕は伝えた．

もう僕の彼女への想いを抑えることはできなかった．

ちなみに最後の願いとは
「彼氏と別れたら教えてね．」
というものだった．

すると
「その願いは叶えることはできないけど，
　私の願いはかなえてね．
　私の願いはとしに幸せになってほしいことだよ．」

僕はほんとばかだね．
「うん，わかった．
　別れたら教えるね．」
という返事でも期待していたんだろうか．

そんなことあるはずないだろう．
万が一送ることを考えていたとしても，
そんなことを言うだろうか．
今好きな人がいるのに．
その人を想いながらどんな顔でそんな内容のメールをうつの？
僕が好きになったのはそんな彼女だったか？

それになんで向こうはこんなにも僕の幸せを願ってくれているのに，
なぜ僕は奴の不幸せを願っているのだろうか．

不幸せになった瞬間，
自分の手で幸せにしてやりたいと思ってのメールだけど，
彼女にとっては今が幸せなんだから，
その幸せが壊れるような言葉である
「別れたら」なんて言葉は吐いてはいけなかったんだ．

僕は最低の人間だ．

この後も数件メールを続けて，彼女が言ってくれた言葉．
「としとはいつまでも友達として
　いい関係ではいたいと思っているよ．」
「弱音吐きたいときはいつでも言ってね．
　相談にのるから．」
「嫌ってなんかないよ．
　私はとしの味方だよ．
　としが幸せになることを願っています．」

今の僕には優しすぎる気持ち．
僕は涙が止まらなかった．

最愛の人は誰なのか．
そしてなくしちゃいけなかったのに，なくしたことを
すごく後悔した．

いつでも相談にのるから．とは言われたものの，
僕からメールを送ることはないだろう．

ただ僕の想いが消えることはあるのだろうか．